卒業生に宛てた手紙

お元気ですか。
成田北高校を卒業して1年。皆さんの担任や化学基礎・物理を担当した秋葉です。

今般、はじめて手紙を送ったのは今話題になっている戦争法(安保関連法)を阻止するための全国2千万人統一署名への協力依頼をお話したかったからです。
私がこんなことをするのは勿論初めてですし、政治そのものもまるで素人です。
しかし学校を去り退職し、政治が身近なものであり、また若い人たちがそれに気づかず大変な世の中になっていくのを傍観しているだけではいけないと思うようになりました。
幸い私には多くの教え子がおり、私がどんな人間か知っている若者がたくさんいます。
多くの署名が戦争のない平和な世の中を存続させてくれると信じています。

署名用紙と返信用封筒と郵便切手を同封しました。
同趣旨・同団体の署名を既にしておらず、趣旨に賛同できるようでしたら
名前と住所を自筆で書いて署名してください。
4月いっぱいで取りまとめ、取扱団体をとおして、5月中に国に提出される予定になっています。
取扱団体が「戦争はいらないネットワーク成田」になっていますが、成田市に住んでいなくともかまいません。すべて住所は県名から書いてください。
更にご家族の方の賛同も得られるならば、一緒に署名していただけると幸です。
郵便切手を返信用封筒に貼り投函してください。(署名用紙のFAXは無効です)

趣旨に賛同し署名したいが下宿等で本人が自筆で書けない場合は、本人の承諾があれば 代筆が可能です。
賛同できず署名できない場合は破棄してください。
尚、切手は使えますので何かしらの用に足してください。

最後に、18歳選挙権に伴い夏の国政選挙に行かれることを期待しています。
はじめての選挙。これから世の中とどう関わっていくかの分岐点だとも思います。
夢を信じて、自分のために大切な一票を投じてください。
あなたの幸せはあなた自身の力で勝ち取ることを念じています。



個人情報が家にあった訳

退職1年後に生徒個人情報が私の家のコンピュータ内にあった訳をお話します。
まず個人情報の内訳ですが、平成23年度入試から26年度の全生徒の第1学年から第3学年までの3年間にわたる全情報、つまり入試処理(学検)、各学期ごとの成績処理、進路希望調査、生徒個人カード、指導要録、3年次は調査書、卒業生台帳等、生徒に関わる情報はほとんどすべてです。

私は平成22年度春から26年度末の5年間、成田北高等学校にお世話になりました。
初年度を除き4年間の担任、弓道部の創設。そして成田北高校にシステムと呼べるものを作り上げたと自負しています。
システムとはデータの一元化により先生方の業務効率を上げ、データの共有により生徒理解を高めるものです。
又、本来のシステムはコンピュータスキルを問うものではないはずです。
誰もが(先生)簡単にそして間違いなく入力でき、その集合体として1つの業務が完成するものでなければなりません。
そのためには1つ1つの処理をプログラムとして記述しておかなければなりません。
私はそのようなことを(マクロ開発)仕事としてきました。
マクロプログラムの開発に生のデータは必要不可欠です。
私の家にあった個人情報とはマクロプログラムを検証するための生データ群であり、データファイルそのものでもなければそれを紙媒体にした住所録でもありません。

一方、マクロ開発には集中力が必要です。
普段は通常業務が終わり、部活指導も終えた夜の7時頃から始めます。
一人物理準備室のコンピュータでマクロの検証をし、翌日になってしまうこともありました。休日出勤も出来ますが、一人暮らしの私には家で仕事をすることも許されます。
いつしか物理準備室のコンピュータにUSBメモリを差し込みデータ及びマクロをコピーして家でもマクロ開発をするようになり、常態化しました。

退職時において、家にあったシステムを消去しようとは考えませんでした。
私が退職しても学校では相変わらずこのシステムを使用する以上、何か不具合があったら私が直さなければならない責任があったし、事実このシステムの引継ぎは在職時には終わらず、退職後学校に行ったこともあり、当時の管理職(教頭)も黙認しています。
個人情報が私の家に退職後もあることは成田北高校のシステム維持には必要だったのです。・・・個人情報である住所を署名運動に使うまでは。(2016.3.22)
一昨年の9月(2015.9.19)、安保関連法案があんな形で決議されてしまわなければ、決して個人情報を使って廃案のための反対署名運動などしなかったでしょう。



記者会見に寄せて

今回、このような形で自分をさらけ出すことは、本来私の望むことではありませんが、こうしなければならない責任が私にあると思います。
1つは、反対署名に賛同してくれた卒業生やその保護者の方々に後悔や挫折感を残してはいけないことです。昨年・今年と2度にわたる新聞報道では、反対署名に使うために不正に個人情報を持ち出したようにしか読み取れないので、賛同者はだまされたと思うかもしれない。私が黙っていれば、それを(不正を)認めたことになってしまうからです。
2つ目は、私を支持してくれる人たち(市民グループ)の期待を裏切らないためです。
特に今年になって、県教委から刑事告発され、一人では太刀打ち出来ない状況に追い込まれたとき、私以外の人からの応援は、私にとって大きな勇気になりました。
そして、共謀罪も問われるような時代に、被疑者に寄り添ってくれるすべての人たちに敬意を表したいと思います。

具体的に私の意思表示をさせてもらいます。
大方は、1週間前の9月6日付、「守る会」発足を報じた新聞記事のとおりですが、8月25日に私を守る会が発足し、その具体策の1つとして、更に多くの人に今回のことを知ってもらいたいという思いから本日の記者会見に至ることになりました。

P4にあるように、私は成田北高校で(自分で言うのもはばかりますが)事実上の生徒情報管理者であり、世間一般で言われているような、校長が情報責任者で教頭が情報管理者、強いて言えば教務主任や情報処理主任が生徒管理の情報を把握しているという構造とは全く違うのです。(情報管理の不適正、情報管理者の不適格)
平たく言えば、学校業務のコンピューターに関わるすべてを1職員にまる投げしているのであって、その職員が転勤や退職すると、しばらくの間は元の学校にメンテナンスに行かなければならないことは、学校の世界ではよくあることです。
県教委が示すスクールコンプライアンスがどんなものか知りませんが、たぶん学校現場の実情とはかなりかけ離れていると思います。

私が335名の卒業生宛に署名用紙と手紙(P1)を送った直後、成田北高校で行われた記者会見の報道記事がP2。その後、私は県教委からの事情聴取を1回受けています。そして上記した私の成田北高校での立ち位置を話し、卒業生の住所データは仕事の関係でたまたま家にあったものの一部を使ったものであり、署名等のために意図的に持ち出したものではないことをわかってもらいました。
そして、私への行政処分に相当する勧告書(P2)を出した県教委は、1年後、相次ぐ教員による不祥事(破廉恥罪)の付け足しのように、再度私を刑事告発すると発表したものがP3の各社新聞報道です。
昨年の新聞記事と 今年の新聞記事を読み比べてください。
今年の報道では、昨年私が県教委からの事情聴取に応じ説明したことは一切触れられておらず、逆に刑事罰を課すことになっている。

昨年と今年の共通点は「無断でコピー」・「無許可で持ち出した」であるが、この表現は今回の事件を矮小化しているように思う。
確かに目的外使用は法的に盗用という言葉を使うそうでであるが、世間一般に盗用とは盗みを意味するもので、「持ち出し」という言葉はそれを裏づける意味合いを持っている。
再度繰り返しますが、私が卒業生の住所データを使ったのは、たまたまそれがあったからであり、退職時、当時の管理職からすべてのデータを消去しなさいという指示もなく、私自身盗んだという意識も全くありません。
結果的に住所データを私用に使ったことが目的外使用であるのだが、手紙にもあるように、私の目的は卒業生の幸せを願うことであり、本来の目的以上のものであると自負している。それを許容しない社会なのだと言われればそれまでだが、それをもって罰するような社会はおかしいと思う。

前述した9月6日の新聞記事によると、県教委の担当者は「県個人情報保護条例違反での刑事告発の先例はないが、教育現場に与える影響の大きさを考慮し、厳正に対処した」と説明している。
教育現場に与える影響とは何を指しているのか。
退職教員が卒業生に向けて、政治活動することか。
それとも、退職教員による不祥事によって当時の管理職が監督責任を問われることか。
少なくとも、今回の刑事告発は、不用意に在職中の生徒情報を私用に使ってしまった私を律するものではなく、教育現場を構成している生徒及び現職教員に向けてのものだといえないだろうか。
教育現場に示しをつけるため、私は「見せしめ」になったとしか思えない。

刑事罰として妥当性がなく、また先例がない刑事告発を見せしめ的に行うことを、私は認めません。
権力によって法が創られたり解釈され、それに隷従する法治国家を私は望みません。
弱い立場の人々や権力を律する法律を守ってもらいたいと思います。
最後に、私個人の実名は公表しても構いませんが、成田北高校という名称はそこに通学する生徒及び卒業生を指すものです。実名は控えてください。



千葉県個人情報保護条例違反刑事告発を受けて (高退教だより155号 寄稿)

 定年退職して3年が経ちますが、今回私の仕出かしたミスとその後の経過について、特別に本機関紙に掲載の快諾をいただき、大変感謝しております。
私の犯したミスは、退職1年後に卒業生の住所を使い、安全保障関連法廃案のための署名用紙を郵送したことです。在職中はそのようなことは当然出来ませんし、また、政治そのものに関心がなかったのですが、1昨年の9月の強行採決の様子をテレビで見ていて、さすがにこれはないだろうと、なんとしてでも廃案にしなければいけないと思いました。
 教員として自分は何を生徒に残してあげられたのか、また、卒業生に対して何ができ、何をすべきなのかとの思いもありました。
個人情報の目的外使用ということで、県教委より勧告書をもらいました。
このことで、現場の先生方には以前にも増して管理職より情報管理の徹底をきつく言われるようになり、大変なご迷惑をかけることになってしまいました。

 それから1年後、県教委は、教員による後を絶たない不祥事の謝罪の付け足しのように、私を刑事告発すると発表しました。つまり、教員は現職であれ、退職後であれ、厳しく指導しているのだと。そう言いたかったのでしょう。

 話は変わりますが、私の教員としての原点は、初任校である清水高校だと思っています。
ノンポリの新卒が当たり前のように組合に入り、輪番制で職員会議の議長までさせられたときの尋常でない緊張感や、職場会での決議文読み上げで「破綻」を「はじょう」と読んで失笑をかったことを思い出します。
清水高校で沢山のハジをかき、40年後にも世間知らずの行為をしてしまったことは恥ずべきですが、組合員であることの誇りは何年経っても変えられません。 「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンは当時の私にはピンとこなかったのですが、現に今その状況が迫っている。先見の明が組合にあったのだと、今更ながら感心するのです。そして40年経ち、やっと私も組合員らしくなれたのかなと思います。

 県教委による弾圧は、単に私個人だけでなく現場の教員集団への萎縮につながります。ですからこの事件は私だけの問題ではなく、市民あるいは民意として闘うべきものだと思い、私は弁護士をたて、私を応援してくれる市民団体と共に不起訴を勝ち取る運動をしています。ホームページを開設しました。
市民団体の正式名称である「秋葉幸一さんを守る会」で検索するか、直接アドレスバーに http://akiba51.net/ を入力してみてください。
 皆様のご多幸をお祈りいたします。



県教委 条例改ざんによる刑事告発 不起訴に謝罪なし (高教組へのビラ)

 1昨年の3月、私は手元にあった生徒個人情報を使用し、教え子である卒業生335名に安保関連法廃止の反対署名用紙をメッセージと共に返信用封筒を同封して郵送しました。この件で、私は全データーの削除および勧告を受けこれを受理しましたが、皆様方においては個人情報の管理徹底の締め付けが強化され、大変ご迷惑をお掛けしました。
しかし事件はこれで終わらず1年後の昨年5月、県教委は私の行為が千葉県個人情報保護条例第63条(以下単に63条と記す)に該当するとして千葉県警に刑事告発しました。
 以下囲み枠内に、本件申し入れ書に対する県教委の回答について、弁護士さんによるコメントの一部を示し、この刑事告発が不当であったことを説明します。

同条は「業務に関して知り得た個人情報を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で盗用」することを禁じています。
つまり、「自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的」がなければ、処罰されることはないのです。
「不正な利益を図る目的」の例としては、金銭を得る目的や、特定の人を誹謗中傷する目的などが挙げられます。
これに対して、県教委は秋葉さんの行為について、「業務に関して知り得た個人情報を、自己の不正な利用を図る目的で盗用することを禁じた、千葉県個人情報保護条例第63条に該当するため、告発した」と述べています。
しかし、この記述には明白な誤りがあります。


 県教委は刑事告発を63条に基づいて行っているわけですが、アンダーラインで示したように条例の文言の一部が置き換えられた形で刑事告発したのです。
告発状は確認できませんが、正式な回答書の中に不正な利用と明記されていますので、告発状にもそうなっていると考えるのが自然です。
つまり公文書の中で条例の文言を県教委に都合よく変えて1個人を告発したことになり、これは公文書改ざんに等しく、その効果は公権力による弾圧となり不当なものです。
また仮に不正な利用が署名行為を指すのであれば、これは憲法に保障されているので告発は無効であり、当然63条にも該当しません。 63条は不正な利益を図る目的で盗用した場合のみ適用されるのです。
千葉地検は私の行為に不正な利益を認めず、昨年12月に不起訴処分を下しました。
実際、事情聴取は実質40分、調書も取らない非常にあっけないものでした。
県教委は遺憾であったと思いますが、告発の効果は十分あったと思います。
新聞報道をとおし、「左翼的な元教員が生徒個人情報を盗用してまで戦争法反対署名を行っている」と県民はイメージし、現職教員は萎縮したと思うからです。

 私たち「守る会」(地元成田の市民団体に高退教や千退教等多くの退職教員の賛同を得て結成され、100名にも達する抗議団体。不起訴後解散)は千葉地検の不起訴に対する県教委の「現時点ではコメントを差し控えたい」(12月22日、東京新聞)とする不誠実さに対し、私から抗議文、守る会から要請書、弁護団より質問状を本年1月末に提出して謝罪を求めました。
ところが県教委からの返事は弁護士団への回答があったのみで、私や守る会には謝罪どころか返事そのものもありませんでした。
 質問状に対する回答は、自分たちの判断(刑事告発)の非を認めず被疑者への謝罪は必要なし、また条例改ざんの疑いは言い直してごまかそうとしているだけで、きわめて不誠実なものでした。

 私は県教委に謝罪を求めましたが、個人的な謝罪を期待していません。
本件で見えてきた理不尽な県教委の行政に不起訴処分が下されたことで、同じような弾圧を現場の教員に与えないよう微力でも抑制したかったのです。
しかし、不起訴後の県教委回答から推測されることは、教員に対する多方面にわたる圧力が残念ながらこれからも続くだろうという危惧でしかありません。
1個人の元教員やそれを支持する市民団体の要請など耳も貸さない公権力に対し、これを交渉の土俵に引き出すためには、法で定められた労働組合(交渉団体)の存在が必要であることを今更ながら実感しました。
 今回の件は小さなものかもしれませんが、多くの賛同者の力で不起訴を勝ち取ることができました。
1教員は小さなものですが、教員集団は決して小さなものではありません。
とにかく今回の刑事告発における県教委の対応を知ってもらうことが大切なことだと考えます。
私は謝罪を求める抗議文の中で県教委に次のように予告しました。

なお、残念ながら貴委員会の誠実な対応がなかった場合は、貴委員会の不誠実な対応として、広く県民にこのことを公表し、民意を仰ぐことをご了承ください。

 守る会のHPで事件の詳細を公開します。
県教委が発行した公式文書(勧告書、申し入れ書への回答書、質問状への回答書)及び、告発の政治的圧力による関与を示す県議会文教委員会議事録(公開文書)のHPアドレスや検索方法、また勧告書から告発までの1年間の時間は何を意味しているか等は教育委員会定例会議事録(公開文書、抜粋)を参照することで見えてくると思います。

 http://www.akiba51.net/

                                           元成田北高校分会 秋葉幸一